「明日世界が滅亡するとしたら何をしますか?」

「明日世界が滅亡するとしたら何をしますか?」

会社の採用試験をテーマにした『ソクラテスの人事』というテレビ番組で取り上げられていたこの質問は、講談社が実際に採用試験で出したものだそうだ。番組では講談社の人事部二名に対して、十人ほどの芸能人たちがそれぞれ趣向を凝らしてこの質問に答えていた。好きな人に告白して成功すればその日のうちに結婚式を挙げるとはるな愛が答えれば、森永卓郎は人類の文化を後世に残すため種子島宇宙センターのロケットに載せて宇宙に発射すると答えた。自分が最も大切にしているものが何かに関わる質問だけに、誰でも何をすべきか真剣に考えざるを得ない問いだろう。

結局講談社の二人は森永卓郎と、ただそれまでのことの感謝の祈りを捧げると答えた江守徹を採用すると答えたあとで、「なにもしない」と答えてかぶってしまった二人を「同じ考えをする人間は必要ない」と切り捨てていた。しかし、この「なにもしない」という答えこそが、この質問の本質を捉えた答えではないかと思う。

なぜなら、この問いは私たちが生きている限り常に突きつけられている問いに他ならないからだ。私たちは今日と同じように、明日を何ごともなく迎えることができると思い込んでいる。しかし、夜眠りについて朝何事もなく目を覚ますという保証も、毎日渡る信号を今回も無事に渡ることができるという保証もない。明日を無事迎えられるかどうかなんて誰にもわからないのだ。『タッチ』の上杉達也は人生最後の日となった地区予選決勝戦の朝、南とともに甲子園に立つ以外にどんな未来を想像することができただろうか。私たちは現実に明日にでも、いや今日にでも、私自身の「世界が滅亡する瞬間」を迎えてしまう可能性とともに生きているのだ。

アップルのCEOスティーブ・ジョブズはスタンフォード大学の卒業式で行った歴史に残る名スピーチで、17歳のときに出会ってとても感銘を受けた死に関する言葉を紹介している。「毎日これが人生最後の日だと思って生きなさい。いつか必ずその通りになる日がくるから」。そう。どんなに人間にも平等に最後の時はいつか必ずやってくる。私たちが何気なくする毎日の行動も、いつか「明日世界が滅亡するとして」選んだ最後の行動になる日が来るのだ。

「明日世界が滅亡するとしたら何をしますか?」。今日一日のあなたの行動こそが、この問いへの本当の答えだ。

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  • つげ義春「二岐渓谷」『つげ義春「旅」作品集 リアリズムの宿』より
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